2010年 SUPER GT 第5戦 SUGO <決勝>
2010年7月25日(日) Final決勝レース
ZENT CERUMO SC430 #38 立川祐路/リチャード・ライアン
決勝総合結果 9位
天候:晴|コース状況:ドライ
ライアンがアタックも、予想外のスピンなどアクシデントに見舞われ、前日の予選ではスーパーラップ進出を逃した#38 ZENT CERUMO SC430。それでも9番手からのスタートということで、まだまだ上位進出は充分可能であり、波乱の多い菅生が舞台とあって、展開次第で表彰台も射程距離にある。それだけに、怒涛の追い上げを実現するために欠かせない、決勝に向けたセットアップを行うべく、LEXUS TEAM ZENT CERUMOは日曜午前9時10分からのフリー走行に臨んだ。
昨日よりは雲が多く、やや日差しが弱まったことから気温29℃、路面温度36℃というコンディションとなった日曜朝の菅生。前日の予選後、「決勝のためにしっかりとフリー走行でクルマを作らないと」と語っていた立川がコクピットに収まり、フリー走行セッションの開始と同時に#38 ZENT CERUMO SC430はコースインしていく。
計測2周目を1分26秒台とし、ゆっくりとタイヤを温めた立川は、GT300をかわしながら、徐々にペースアップ。計測3周目には一気にプッシュし、#38 ZENT CERUMO SC430は1分18秒872の好タイムをたたき出し、一気にタイミングモニターのトップに躍り出る。
好調な滑り出しの#38 ZENT CERUMO SC430に、前日からマシンの修復を行ってきたスタッフたちにも安堵の表情が伺えたが、その直後、計測5周目の終盤に差し掛かっていた立川にまさかのアクシデントが起こる。
ペースの遅いGT300をイン側からパスしようと、最終コーナーイン側のラインをトレースしていた立川。しかし、ここでコース中央寄りのラインを走行していたGT300マシンが突如ピットインをしようとラインをイン側に変更、#38 ZENT CERUMO SC430の進路に切れ込んで来てしまったのだ。イン側にいたため避けることも出来ず、#38 ZENT CERUMO SC430とGT300マシンは接触。2台はもつれ合うようにアウト側のグリーンゾーンへコースアウト、そのままガードレールに激突してしまう。
このアクシデントでセッションは赤旗終了。左フロント部分を中心に、大きなダメージを負ってしまい、走行不能となった#38 ZENT CERUMO SC430のコクピットから這い出した立川は、「どういうことなんだ!」と憤懣やるかたない面持ちで相手のドライバーに状況説明を求める。相手は自らの不注意を詫びたが、LEXUS TEAM ZENT CERUMOは決勝を前に予期せぬ苦境に追い込まれてしまう。
ピットに戻ってきた#38 ZENT CERUMO SC430のダメージを受けた箇所を取り外し、まさにスタッフ総動員、急ピッチで修復作業を進めるLEXUS TEAM ZENT CERUMOだったが、フロント部分はもとより、左サイドの損傷も酷く、スタッフたちの必死の作業にも関わらず、時間は刻々と過ぎていく。
しかし、スタッフたちの必死の努力により、ついにLEXUS TEAM ZENT CERUMOのガレージを覆っていたシートが外されたのは、決勝を目前に控えたスタート進行中。ウォームアップ走行はもちろん、グリッドに着くことも叶わなかった上、サスペンションのアライメントもしっかり取る時間もなかった#38 ZENT CERUMO SC430だが、「それでも良いから出して!」との立川の願いに応え、チームはなんとか組み上がったマシンにタイヤを装着。走行準備を整えた立川が#38 ZENT CERUMO SC430のコクピットに座ったのは、フォーメイションスタートの約10分前という状況ながら、なんとか#38 ZENT CERUMO SC430はピットスタート出来ることとなった。
フォーメイションを終えたGT500の隊列が決勝をスタート、さらに背後のGT300の隊列が1コーナーをクリアしてから、ようやくピットロードエンドで待機していた立川の前の信号が青に。脱兎のごとく加速していく#38 ZENT CERUMO SC430は、大きなビハインドを背負ったものの周回遅れになることはなく、81周先のチェッカーを目指す戦いをスタートした。
「とにかくプッシュするしかない……」と立川は、猛然と追い上げを開始。GT300を掻き分けながら、じりじりとポジションを上げて行く立川は、8周目にはついにGT300全車をかわし、総合13位に浮上。前を行くのはGT500マシンのみとなったが、時間がなく満足にセットアップも施されていないため、時として思いのままに動かない#38 ZENT CERUMO SC430を駆って、立川の追い上げは続く。
16周目に#35 MJ KRAFT SC430がトラブルでストップし12位、30周目には#18 ウイダー HSV-010が早めのピットインをしたことで11位、32周目には同じく#32 EPSON HSV-010がピットインしたために10位と、じりじりとポジションを上げることに成功した#38 ZENT CERUMO SC430は時折雨のパラつく中、再び最終コーナー付近でGT300マシンに接触されるなどのアクシデントを乗り越え、6位にまで浮上を果たした46周終了時にピットイン。マシン修復のために昼食もままならないLEXUS TEAM ZENT CERUMOのスタッフ達だったが、いつもどおりの迅速な作業でライアンに交代した#38 ZENT CERUMO SC430を再びコースに送り出す。
コースに戻ったライアンは、「ベストな仕事をしてくれたメカニックたちのためにも、自分もベストを尽くさねば……」と奮闘。10番手にまで下がったポジションを48周目には9位へと挽回。しかし、その後はペースの速い上位陣に対してのスタート時点での動かせない大差が響き、8位とのタイム差は30秒近くもあり、ラップダウンを喫している以上、さらなるポジションアップは不可能な状況。
それでも、最後まで諦めることなくプッシュを続けたライアンは、見事9位でチェッカー。狙っていた上位入賞こそフリー走行のアクシデントに阻まれたが、#38 ZENT CERUMO SC430は出走さえ危ぶまれた決勝で貴重な2ポイントを追加。メカニックたちの健闘によって、タイトル争いに希望を残すこととなった。
ドライバー/立川 祐路
「朝の事故は避けようもない状況で、ガードレールに当たった瞬間、かなりの衝撃で“もう決勝には出られないだろうな”という思いがよぎったほどでした。けれど、LEXUS
TEAM ZENT CERUMOのメカニックや、TRDのスタッフたちの頑張りで、なんとか決勝に間に合うことができました。スタッフ達は本当に頑張ってくれたと思います。アライメントが取れていない状態でしたから、右コーナーと左コーナーで挙動が違うなど、コントロールの難しい状況はありましたが、なんとか完走しポイントを獲得できたことは不幸中の幸いでした。次戦の鈴鹿は700kmで難しい戦いになりますが、なんとかそこで踏ん張って、タイトル争いに踏みとどまらないといけませんね」
ドライバー/リチャード・ライアン
「今日のレースは、本当にメカニックたちの“ベストレース”だったと思う。もちろん、時間のない中での作業で、セットアップの充分なマシンではなかったから、ドライビングは難しかったし、思うようなレースペースでは走れなかったけれど、朝の状況を考えれば、本当にメカニックたちは素晴らしい仕事をしてくれたと思うよ。僅か2ポイントとはいえ、出走できなかったり、何周も遅れた状態でレースをスタートしていたら、完全にノーポイントだったのだから、貴重なポイントを追加出来て良かったと思う。次戦では上位のマシンがさらに重くなるので、なんとか上位フィニッシュを狙いたいね」
監督/高木虎之介
「とにかく時間がないということで、間に合ったと言うよりも、アライメントを取ることもせず、無理やり間に合わせたような状況での出走でした。そんな状況だった割には、立川とライアンは頑張ってくれたのかなと思いますし、9位とはいえポイントを獲得することも出来ましたし、状況を考えれば上出来だったと言えるのではないでしょうか。残念といえば残念ですが、今週はこういう流れだったのだと気持ちを切り替え、次戦の鈴鹿700kmでは絶対に勝ちに行かねばチャンピオンはない、という流れになって来ているだけに、周囲のマシンが重くなって来た分、なんとか勝ちを狙えるよう頑張ります」