2010年 SUPER GT 特別戦 FUJI <決勝>
2010年11月13日(土)・14日(日) Final決勝レース
ZENT CERUMO SC430 #38 立川祐路/リチャード・ライアン
決勝1結果 優勝
天候:曇り|コース状況:ドライ
風もなく、まずまずのレース日和に恵まれた土曜の富士スピードウェイ。今大会の土日は、スペシャルイベントということで決勝レースのみが行われ、通常のようにフリー走行も行われないため、本格的な走行としては午後3時10分からの決勝レース1だけとなる。しかしながら、イベント色の濃い大会であり、Fニッポンとの同時開催ということで、お昼にはオープニングセレモニーやすべてのカテゴリーがグリッドに並ぶ、オールグリッドウォークなどさまざまな催しが組み込まれている。このため、LEXUS TEAM ZENT CERUMOではこの日のレース1をポールポジションからスタートするライアンが乗り込み、グリッドウォークなどに参加するなど、チームは忙しく時間を過ごしていく。
Fニッポンのレース1、そしてGT300のレース2が終わった午後3時ちょうど、レース1に向けた下見走行のコースインが始まった。#38 ZENT CERUMO SC430にはライアンが乗り込み、スタンディングスタートの練習を含め、じっくりとフィーリングを確認するライアン。グリッドではコクピットに収まったまま、J SPORTSのインタビューを受けサムアップを見せたライアンは、いよいよポールポジションからの22周の戦いに臨んだ。
午後3時15分に始まったフォーメイションで入念にタイヤを温めたのち、アウト側のポールポジションに#38 ZENT CERUMO SC430を止めスタンディングスタートに向け集中を高めたライアンは、レッドシグナルが消えると期待通りのロケットスタートを決め、トップのまま1コーナーへ飛び込んでいく。
22周という短いレースながら、1周目からトップに立った#38 ZENT CERUMO SC430の背後では接触やコースオフが起こるなど、シリーズ戦を上回る激しい攻防が展開される。しかし、トップのライアンはそうした喧騒を他所にスパート。2位につける#35 MJ KRAFT SC430に対し、早くも1周終了時で1秒3のマージンを稼ぐ。タイヤが温まり始めるとペースアップしたライアンは、3周目に1分35秒627をマークすると、4周目には1分35秒510、さらに5周目には1分35秒442とベストラップ更新を重ね、追いすがる#35 MJ KRAFT SC430に付け入る隙を与えず、レースをリードしていく。
6周目あたりから、背後の#35 MJ KRAFT SC430のペースががっくりと落ちる中、#38 ZENT CERUMO SC430は6周目以降も1分35秒~36秒台での周回を続ける。このため、2番手とのギャップは6周目に約2秒、7周目に約4秒、8周目には約6秒2と、瞬く間に拡大していく。
ライアンの好走にピットでも勝利を確信していたピットだったが、なんと残り3分の1となったあたりで、突然ライアンが無線で「タイヤが厳しい!」と訴え始め、一気に緊張が走る。苦しさのあまり、ピットに入れないかとまで伝えてくるライアンだったが、そこまでに稼いでいた大きなマージンに守られ、2周ほどペースを落として様子をみたところ、若干タイヤが復活し再びペースアップをすることが可能に。
こうした状況の中、終盤は追い上げてきた#17 KEIHIN HSV-010が2番手に浮上したものの、ライアンとのギャップはじりじりとは詰まるものの、#38 ZENT CERUMO SC430に詰めよることはできないままレースはファイナルラップに突入する。
結局2番手の#17 KEIHIN HSV-010に4秒8の差をつけた#38 ZENT CERUMO SC430は、スタッフたちがコンクリートウォールによじ登って出迎える中、ライアンの手によって見事トップでチェッカー。シリーズ戦では優勝を果たせなかったが、このスペシャルイベントで待望の今季初優勝を飾ることとなった。
運転席側の窓から右手を突き上げ、手を降りながらウイニングランの余韻に浸るライアン。パルクフェルメにマシンを止め、コクピットから降りてきたライアンはフラッシュの放列を浴び、ガッツポーズ。会心の笑顔を見せることとなった。
明日のレース2では5番手スタートとなる#38 ZENT CERUMO SC430だが、レース1での望みどおりのライアンのポール・トゥ・ウインに続いての、立川の手による連勝が期待される。
ドライバー/リチャード・ライアン
「まさに完璧なレースだったね!スタンディングスタートが予想していた以上にうまく決まったし、その後のペースも良く、最後までトップを守ることが出来た。タイヤが厳しくなってレース後半は苦労してしまったけれど、少しペースを落としてラップしたことで、再びペースが戻ったし、なによりそこまでに稼いでいたマージンがモノを言ったよ。今年はなかなか勝てなかったけれど、今日の優勝はトヨタ、TRD、ZENT、そしてチームスタッフ全員の努力にささげたい。個人的にも今日は優勝できてハッピーだったけれど、明日もまだ立川のレース2が残っている。明日も今日のような良い結果でシーズンを終えられたら、チームにとっても最高だね」
監督/高木虎之介
「リチャードは昨日スタンディングスタートがあまり良くないようなことを言っていましたが、相当スタートを練習したようですね(笑)。お陰で、今日は完璧なスタートだったと思います。序盤から中盤までのラップタイムは良かったんですが、途中でタイムがドカーンと落ちたので心配したんですが、なんとか前半にリードした分でカバーして逃げ切ることが出来て良かったです。ピットに入りたいと言い出すほどリチャードは辛かったようですが、周囲も同じようにタイムが落ちていましたからね。その中では、うまく粘ってくれました。明日はまた路面温度が下がる可能性もありますが、タイヤ選択、セットアップなどいろいろ対策を考えて臨みたいと思います」
決勝2結果 13位
天候:曇り|コース状況:ドライ
前日のレース1ではライアンによる久々のポール・トゥ・ウインに沸いたLEXUS TEAM ZENT CERUMO。この日のレース2では立川が戦うこととなっているが、予選5番手からのスタートとはいえチームとしても正真正銘今季最後のレースとなるだけに、なんとか優勝で有終の美を飾りたいところだ。
やや曇りがちだった前日同様、この日の富士も快晴とはでは行かず雲の多い1日となったが、前日とは異なりFニッポンのレース2の前に自衛隊の音楽隊が先導するオープニングセレモニーや航空自衛隊の戦闘機による飛行など、スピードウェイはよりいっそう華やかな雰囲気に。セレモニーには立川、ライアンのドライバーコンビとともにチームスタッフも参加、スタンドの観客に手を振りながら入場するなど、つかの間のリラックスタイムとなった。
Fニッポン、GT300の決勝レースが進んでいく中、立川はJ SPORTSの生中継にゲスト出演。“富士マイスター”として、富士攻略法を語るなどして番組を盛り上げた後、いよいよ午後3時10分にレース2決勝のフォーメイションラップをスタートした。
前日のレース1で後半になってライアンがタイヤに苦しんだことから、「タイヤの状況を良く考えて、マネージメントしながら走りたい」と語ってレース2に臨んだ立川と#38 ZENT CERUMO SC430。もちろんアウト側5番グリッドからのロケットスタートにも期待が集まる。
午後3時14分、レッドシグナルが5つ点灯、そしてブラックアウト。期待通りの鋭い加速を見せた立川の乗る#38 ZENT CERUMO SC430は、ややイン側に切れ込みながら1コーナーへ飛び込んでいく。しかし、ここで左後方にいた#24 HIS ADVAN KONDO GT-Rが、ブレーキングして1コーナーへ入ろうとしている#38 ZENT CERUMO SC430の左リヤをプッシュ。たまらずバランスを崩した立川は、1コーナーの中でスピンを喫し、その際アウト側にいた#100 RAYBRIG HSV-010にリヤからヒットしてしまう。
このアクシデントで一気に最後尾にドロップしてしまった#38 ZENT CERUMO SC430は、リヤに大きなダメージを負い、すぐさまピットイン。ここでメカニックはタイヤを交換すると同時に、リヤのダメージをテープなどで応急処置をして立川をコースに送り出す。
なんとかレースに復帰を果たした立川だったが、周回遅れとなった上、コースに戻った場所が悪く上位陣のバトルの隊列の中に入ることとなり、無念の青旗を振られてしまう。上位陣のレースを阻害することのないよう、立川はいったんペースを大きく落とし、最後尾に着くと、そこから再びペースを上げ周回を始めることに。
最後尾からのレースを戦わざるを得なくなった#38 ZENT CERUMO SC430だが、リヤに大きなダメージを受けてはいるもののフィーリングは非常に良く、4周目に1分36秒093、5周目に1分36秒048とハイペースでの周回が可能な状態。さらに自身の6周目には1分35秒650というベストラップを刻むなど、立川は怒涛の追い上げを見せる。
周回遅れながらも間隔の開き始めた上位陣の攻防に割って入り、着実なレースを戦っていた立川に、17周目に予想外の一報が入る。ピットでの作業違反があったというのだ。リヤのダメージを修復した際、オフィシャルの確認を得ぬままマシンをコースに送り出してしまったため、ペナルティーを受けてしまったようだ。
ライバル車がタイヤ交換のためピットインしたことから、いったん12番手にポジションを上げていた#38 ZENT CERUMO SC430だったが、19周目に立川はピットに入り、ドライビングスルーペナルティーを消化することに。
このため再び13番手にポジションを下げた立川だったが、ファイナルラップまでレースを捨てることなく好タイムでラップを重ね、そのままチェッカー。残念ながらアクシデントに巻き込まれ、昨日に続く連勝はならなかった#38 ZENT CERUMO SC430だが、今季最後の戦いで力強いレースを見せ、来季への大きな手応えを感じることとなった。
ドライバー/立川 祐路
「オリベイラ選手らしいのですが、僕は良く見えなかったんですが1コーナーで後ろから当てられて飛ばされてしまって……。凄い勢いでグルッと1回転する感じでスピン状態になり、リヤから100号車に当たったのかどうかも良く分かりませんでしたね。レースに復帰してからはラップ遅れでトップ集団の辺りに出てしまったので、いったん後ろまで下がりましたが、ダメージがあったとはいえクルマのフィーリングが凄く良くて、最終ラップまで良い感じで周回できました。今週末、僕自身のレースは残念でしたけれど、リチャードが勝ってくれたし、今日のペースを見ても自分達のクルマのポテンシャルの高さを確認できました。ここ2年、あのクルマを使って苦しんできた部分の不安が解消されたような気がしています。そういう意味で、良いレースウィークになったと思いますね」
監督/高木虎之介
「立川のスタートは良かったんですが、1コーナーで当てられてしまってスピン。あれでペナルティーがなぜ出ないのだろうとは思いますが、今回はスプリントレースですから仕方ないのでしょうか。今日のレースでの結果は残りませんでしたが、あれだけリヤにダメージを負っている状態ても、その後のペースがとても良かったですし、良い意味で来年に向けての手応えを得ることが出来ました。シリーズ戦では思うような形で終われませんでしたが、このイベントを良い形で終われたので、来年への良い兆しが見えたような気がします。来年も頑張りますので、応援宜しくお願いいたします」