2023年 SUPER GT 第7戦 AUTOPOLIS <決勝>
2023年10月15日(日) final 決勝
ZENT GR SUPRA#38 立川祐路/石浦宏明
決勝結果 4位
< 決勝 > 天候:晴|コース状況:ドライ
10月14日(土)の公式予選では決勝レースを見据えたタイヤ選択を行いながらも7番手につけ、確実に上位を見据える位置につけたTGR TEAM ZENT CERUMO。迎える決勝は、オートポリスでは初めてとなる450kmレース。まだ誰も挑んだことがなく、どうタイヤを保たせながら速さをみせるか、そしてどんな戦略を採るか、チームはこのチャンスを活かすべく夜遅くまで作業を行い、ZENT CERUMO GR Supraを仕上げていった。
迎えた決勝日のオートポリスは、朝から多くのファンが訪れ賑わいをみせた。気温17℃/路面温度27℃というコンディションのもと迎えた午後1時30分からの決勝レースでは、ZENT CERUMO GR Supraのスタートドライバーを立川が務めた。スタート直後、まずは7番手から序盤のレースを戦っていった立川は1周目、#19 GR Supraを先頭とした3番手争いの集団のなかで虎視眈々と上位進出を狙っていった。
公式予選Q2で履いていた硬めのタイヤがスタートタイヤとなっていたが、立川は集団のなかでしっかりと熱を入れると、ここから立川のオーバーテイクショーが開幕した。7周目、前後のライバルたちとともに#19 GR Supraをかわし6番手にポジションを上げると、9周目には#37 GR Supra、さらにペースが落ちはじめた#14 GR Supraを一気にオーバーテイク。さすがの巧さをみせつけた。
勢いに乗る立川は、2番手の#39 GR Supra、近いスピードであると予想される3番手の#17 NSX-GTに近づくと、14周目の1コーナーではバトルのなかで一気に大外刈りで2台抜き。2番手に浮上する。すると19周目、トップを走っていた#16 NSX-GTがピットインしたことから、ついにZENT CERUMO GR Supraはトップに浮上した。硬めのタイヤのフィーリングも良く、ライバルたちに比べるとピックアップの症状も軽いようだった。
そんな立川は、首位のまま20周を終えてピットイン。ステアリングを握ったままタイヤ交換と給油を行いピットアウトしていく。チームクルーたちもしっかりと作業を行い、イレギュラーな戦略を採った#23 Z GT500、さらに#17 NSX-GTにはわずかに先行されたものの、ふたたびウォームアップを終えると、立川の前でピットアウトしてきた#39 GR Supraをかわし、二度に渡って入ったフルコースイエローを挟みふたたび#17 NSX-GTとテール・トゥ・ノーズへ。アグレッシブなレース展開をみせサーキットを十分に沸かせ、3番手を走り50周を終えピットへ。石浦宏明にZENT CERUMO GR Supraのステアリングを託した。
ピットで控えていた石浦は、当初立川が履いていたのと同じ硬めのタイヤで後半の長いスティントを走ることを予定していたが、気温、路面温度の変化のせいか、立川のペースが少しずつ苦しくなりはじめた。チームはインフォメーションをもとに、使用するタイヤを柔らかめのものに変更する。残りは47周。まったく予想もつかない長丁場だ。
とはいえ、ZENT CERUMO GR Supraの戦略は、ライバルよりも早めにピットに入り、トラックポジションをキープするアンダーカットであり、この作戦が功を奏していく。ライバルたちがその後ピットインを行うと、石浦はその横を通過。ZENT CERUMO GR Supraは実質的なトップに浮上した。あとはなるべく高いペースを保つことができれば、表彰台は見える展開となっていった。
ただ、47周という長いスティントで、石浦はタイヤマネージメントを行いながらラップを重ねていくものの、地力のペースがあり、タイヤもフレッシュなライバルたちが続々と石浦をかわしていった。#16 NSX-GT、#3 Z GT500、さらに#36 GR Supraといった、チャンピオン争いにも絡む3台たちが続々と石浦を抜いていく。しかし、無理に抗戦してもタイヤを傷めてしまうだけだ。石浦はその経験を活かし、タイヤを守りながらチェッカーを目指していった。
石浦の後方からは、さらに序盤から近い位置を走っていた#17 NSX-GTが接近してくる。ペースが違いすぎる相手とは異なり、この#17 NSX-GTは前に出すわけにはいかない。石浦は長い攻防をしっかりと守りながら周回を重ねていたが、逆に#17 NSX-GTは終盤急激にペースダウン。代わってこれを抜いてきた#1 Z GT500が石浦に近づいてきた。チェッカーまで残り2周となる96周目、ついに石浦は#1 Z GT500に先行を許し、5番手にドロップしてしまう。しかしファイナルラップ、#1 Z GT500にミスがあり、石浦はポジションを奪還。4位でフィニッシュすることになった。長丁場のミッション完遂に石浦は少し疲れた表情も見せたが、それでもチーム全体がミスなく、力を出し切ったことに充実の表情もみせた。
惜しくも表彰台には届かなかったが、サクセスウエイトが軽くなるなかでもチームが全力を出し切り、優勝争いにはしっかりと絡むことができた。TGR TEAM ZENT CERUMOの勢いは間違いなく上向きの矢印を示している。
次戦はモビリティリゾートもてぎでの最終戦。ついに迎える立川祐路のラストレースだ。TGR TEAM ZENT CERUMOは最終戦を好結果で飾るべく、全力を注いでいく。
ドライバー/立川 祐路
「公式予選ではレースを見越したタイヤを選んでおり、それでスタートすることができたのですが、予想よりも気温が低かったので、そこは心配でしたね。とはいえタイヤが温まってしまえばフィーリングも良く、攻めの戦いをすることができました。自分の2スティントめはアンダーカットしてきたチームもいて順位もよく分かりませんでしたが、序盤同様に良いペースで走れたのではないかと思います。戦略としても、チームが最初に想定していた戦略を採っていたので、序盤から順位を上げられ、上位でフィニッシュできる可能性もありました。とはいえ、トップ3も速かったですからね。そんななかでも、後半のロングスティントを走ってくれた石浦選手の頑張りもあって、その3台に次ぐ位置でフィニッシュすることができました。今週はチーム、ドライバー含めて、みんなが良い戦いをできたと思います。今季はいろいろな体制を変えてきたなかで、良い方向が結果にも繋がってきていると思います。そうは言っても4位で喜んでもいられないですし、勝つためにやっていますからね。残りの1レース、ラストランを優勝で飾ることができるように、チーム一丸となって臨みたいと思います」
ドライバー/石浦 宏明
「硬めのタイヤでスタートしましたが、序盤立川選手がウォームアップに苦しむかと思ったものの、さすがに熱を入れるのが巧いですね。周囲のタイムが落ちはじめてきてからは『本当に引退する人なのかな?』というくらいの素晴らしいオーバーテイクをみせてくれました。その後、ライバルがアンダーカットをしてきたなかで戦略が難しくなりましたが、レース中盤、急遽使用するタイヤを変更することにして、その後は自分が頑張るしかないな、と思っていました。自分のスティント中盤はアンダーカットを狙いつつも、ゴールまでの周回が長かったのでタイヤマネージメントを行いながら走りました。オートポリスは、タイヤの状態が良い速いクルマはすごく速いので、抑えるのは厳しかったのですが、同じようなペースだった#17 NSX-GTや、#1 Z GT500は最後まで抑えようとプッシュしました。もちろん表彰台には乗りたかったですが、自分たちのベストを尽くすことができましたし、トップ3と比べるともっと速さが必要でしたね。最終戦こそ、表彰台に乗りたいです。今回はチームみんながミスなくいけましたし、最終戦もしっかりとこういうレースを戦いたいです」
監督/村田 淳一
「前日に比べて路面温度が上がってきてはいたものの、求める温度まで上がっていなかったなかで、序盤はタイヤが使える温度域に入っていたのではないかと思います。立川選手のペースも良かったですし、まわりが苦しむなかで、我々も問題がなかったわけではありませんが、比較的良かったのではないかと思います。立川選手らしいオーバーテイクもみせてくれました。うまく機能したのではないかと思います。石浦選手の後半スティントは長かったですが、そこまでしないとトラックポジションでも前に行けませんでしたからね。頑張ってくれました。とはいえトップ3台のペースには一歩及びませんでしたので、そこは反省点だと思っています。良いところもありましたが、悪いところもあったレースではなかったでしょうか。結果的に今季最高位とはなりましたが、最終戦では立川選手のラストレースをもっと良いかたちで締めくくり、引退がもったいないと思わせるくらいの結果を残したいと思っています。もちろん簡単なことではないので、次に向けてしっかり準備したいと思っています」