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SUPER GT RACE REPORT

2020年 SUPER GT 第8戦 FUJI <決勝>

2020年11月29日(日) Final 決勝
WAKO'S 4CR GR SUPRA#14 大嶋和也/坪井翔
決勝結果リタイア
< 決勝 > 天候:曇|コース状況:ドライ

 

2020年 SUPER GT 第8戦 FUJI 11月29日(日)、TGR TEAM WAKO'S ROOKIEにとってSUPER GT参戦初年度となる2020年の総決算となる第8戦富士の決勝レースの日がいよいよやってきた。新型コロナウイルスの影響で大きく変更されたカレンダーのなか、怒涛のシーズンを送ってきたチームにとっては、チャンピオンをかけた決勝日だ。

 トヨタ自動車豊田章男社長がサプライズでドライブするなど、大きな盛り上がりをみせたフライトパフォーマンス『“Thanks for ALL” Yoshi MUROYA × LEXUS Special Flight@ FUJI SPEEDWAY』などのイベントを経て、迎えた午後1時の決勝レース。スタンドを多くのファンが埋めるなか、3周のフォーメーションラップを経て、決戦の火ぶたが切って落とされた。

 WAKO'S 4CR GR Supraのスタートドライバーを務めたのは大嶋和也。予選13番手と後方からのスタートとなったが、チームは今回のレースに向け、ある秘策をもっていた。それは、GT300クラスでも多くのチームがトライしているタイヤ無交換作戦だ。強大なダウンフォースをもつGT500クラスではあまりメジャーではない作戦だが、タイヤを労りながら高いペースを保てば、それは実現できる。特に後半スティントを担当する坪井翔は、過去にGT300でそうしたレースを数多く経験していた。

2020年 SUPER GT 第8戦 FUJI しかしその作戦を成功させるためには、グリップが落ちはじめる後半までにある程度のタイムを稼いでおかなければならない。大嶋はレース序盤から、後半の坪井のことを考えつつ、タイヤを温存しながらもオーバーテイクをするという、非常に難しいタスクに挑んでいたのだ。

 大嶋はまず2周目、12番手に順位を上げると、5周目には#8 NSX-GTをオーバーテイク。さらに8周目、#19 GR Supraをかわすなど、GT300との混戦をうまく使いながら、ポジションを着実に上げていく。GT500クラスのライバルのなかには、タイヤのピックアップと呼ばれる症状に悩むマシンも多かったが、WAKO'S 4CR GR Supraには比較的症状がなく、高いペースを保つことができていた。

 勢いに乗る大嶋は、16周目には混戦のなか#12 GT-R、#38 GR Supraを、さらに同じ周に#23 GT-Rをかわし一気に5番手に浮上してみせる。13番手からの8台抜きと、WAKO'S 4CR GR Supraのレースの強さをみせつけるかのような走りを披露し、22周を終えピットイン。大役を果たした。

 この周、GT500クラスではWAKO'S 4CR GR Supraの前にいた#17 NSX-GTや#100 NSX-GTも同時にピットインを行っていたが、当初の作戦どおりタイヤ無交換作戦を敢行したWAKO'S 4CR GR Supraは作業時間が短く、ピットアウトすると大きくジャンプアップすることに成功する。しかも使用していたタイヤだけに、アウトラップにウォームアップする必要もない。前半スティントでトップを走っていた#37 GR Supraの前に出ることに成功し、この時点の実質のトップに躍り出た。

 

2020年 SUPER GT 第8戦 FUJI このまま勝利を飾ることができればチャンピオンも近づく……。しかし、そんなTGR TEAM WAKO'S ROOKIEの野望はこの後暗転してしまう。交代した坪井は、すぐにタイヤのグリップ不足を感じはじめていたのだ。27周目、#37 GR Supraに先行を許すと、30周目、さらに坪井に#36 GR Supra、#100 NSX-GTが急接近した。

 坪井は31周目、TGRコーナーのブレーキングで勝負を仕掛けてきた#36 GR Supraに必死の抵抗をみせるものの、やはり無交換のタイヤでは抗しきれず、#36 GR Supraと接触。先行を許し、さらに#100 NSX-GTにもかわされてしまった。

 とはいえ、粘りの走りを続ければまだまだチャンスはある……。そう思った坪井だったが、WAKO'S 4CR GR Supraのボンネットがなんと外れかかっているではないか。このまま走行を続けては支障が出てしまう。坪井は断腸の思いでWAKO'S 4CR GR Supraをピットに向けることになった。

 ピットに戻ったWAKO'S 4CR GR Supraは、チームによって補修が行われふたたびコースに戻ったものの、接触の影響か電気系のトラブルが発生。パワーステアリングなどにトラブルを抱え、WAKO'S 4CR GR Supraはガレージに戻らざるを得なくなってしまった。今季最終戦にして、無念のリタイアだ。

 一時はシリーズランキングをリードしたものの、後半戦はうまくシーズンをこなすことができなかったTGR TEAM WAKO'S ROOKIE。参戦初年度はたしかな存在感をみせたものの、目標となるタイトル、優勝には届かずシーズンを終えることになった。来季、目標を早期に達成するべく、TGR TEAM WAKO'S ROOKIEはオフの雌伏のときを迎える。

ドライバー/大嶋 和也
「今回、レース前からタイヤ無交換作戦でいこうと決め、そのために必要なトップとのタイム差を計算していました。そのためにはかなりの台数を抜かなければタイム差のなかに留まれないこともあり、序盤タイヤのウォームアップには苦戦したものの、フィーリングは良かったですし、ピックアップもほとんどなくグリップを残したまま走ることができました。しかし後半スティントは気温も下がり、燃料も積んだことで厳しい状態になってしまいました。坪井選手には申し訳ないところもありますが、チームとしては全力でやれることをやったレースだったと思います。いずれにしろライバルに対しては今季は完敗ですね。来季に向けて、またチャレンジしたいと思います」

ドライバー/坪井 翔
「今回、タイヤ無交換作戦でいこうと決めていましたが、大嶋選手が序盤追い上げてくれて、勝負に出ましたが、結果的にはうまくいきませんでした。想像以上にグリップがなく、走り出しから厳しい感じはしていましたが、36号車とのバトルのなかでフロントノーズが浮いてしまい、修復が必要になりました。さらにその衝撃によってなのか、電気系にトラブルを抱え、最終的にはリタイアとなってしまいました。個人的には、無交換作戦が失敗したとしても、あの接触がすべて台無しにしてしまいましたし、しっかりポイントが獲れるレースにしたかっただけに悔しいです。今季は予選のスピードが足りないことが最後まで課題として残ってしまいました。来季へ改善しなければならない部分が多いのかな、と思っています」

監督/高木 虎之助
「予選の順位が13番手だったので、その時点である程度苦しいレースになることを予想はしていました。そこでやれることをすべてやろうとレースに臨みましたが、結果的には仕方ないですね。予選でやはり前の順位にいなければいけません。ミラクルが起きなければトップには上がれないと思います。今季はチームとして初めてのシーズンで、ここまで頑張ってくれたとは思いますが、来季に向けてさらに力をつけていきたいと思っています」